
WMSは、倉庫管理システムを指す言葉で、取引先が増えて多くの商品や部品を管理する業務が忙しくなった企業に有効な手段です。とはいえ、豊富なタイプがあり、どのサービスを選べばいいのかわからない人もいます。そこで、今回はWMS導入費用を抑えるには?コスト削減のポイントと交渉のコツを紹介します。ぜひ参考にしてください。
WMS導入にかかる費用とは?サービスごとの特徴と価格相場
WMSの費用は、サービスの提供形態によって変わり、インターネットを経由して利用するSaaS型・必要な機能を組み合わせるパッケージ型・1から開発するスクラッチ型の3つに分けられます。それぞれ特徴が異なるため、導入する企業の事業規模によって選択するといいでしょう。
小規模向けのSaaS型
SaaS型とは、インターネット経由でサービスを利用する方法です。データを移行しトレーニングを済ませてシステムが稼働できるよう設定する手間がかかるため、初期費用は最低でも100万円かかります。維持費は月額20万円程度とされています。以降に紹介するWMSと比較すると初期費用・ランニングコストともに低いのが特徴です。
すでに提供されているシステムを活用するため、契約が成立してから稼働するまでの期間が3か月と短く、小回りを重視する中小企業に向いたサービスといえるでしょう。ただし、カスタマイズがほぼできないため、導入前のサービス選定が重要です。
また、長期的に運用するとトータルコストが高くなるため、注意が必要です。つまり、WMSの基本的な機能が使えれば業務の改善ができる企業と相性が良いシステムといえます。導入を検討する場合は現場の意見を取り入れ、基本機能で十分なのか判断するといいでしょう。
機能を拡張できるパッケージ型
パッケージ型は、既存のサービスを組み合わせて提供される形態のサービスです。サービスを構築して動作が安定しているかテストする必要があるため、初期費用は1,000万円以上かかります。提供されるサービスの内容や規模によっても費用が大きく変動するため、打合せが重要です。運用コストは、開発費用の1割に加え、年間で最低300万円程度がかかります。安定してシステムが作動するためのメンテナンス費用やクラウド費用の利用料が徴収される仕組みです。
パッケージ型のWMSには、倉庫管理に必要な機能がまとめられて提供されており、契約者の業務を最適化するために独自メニューを組み合わせることも可能です。
たとえば、入荷に時間がかかる企業の場合、入荷に関するデータをシステムに連動させて在庫管理ができる状態にすれば、検品にかかる時間を別の作業に振り分けることが可能となり、効率が良くなります。つまり、パッケージ型WMSは自社の問題を解決しやすい方法といえます。
ただし、基本的にはカスタマイズするほど初期費用が増え、ランニングコストも連動して高くなるため注意が必要です。常に一定量の物量を扱い、管理業務が多様化している企業に適しています。
自社専用のスクラッチ型
スクラッチ型は、自社専用のWMSを1から開発する方法です。自社の問題を解決するための機能がオーダーメイドで実装できるため、最も倉庫管理業務の効率を改善しやすい方法といえます。
初期費用は、開発費用・専用サーバーの購入・設定する手間などがかかるため、最大で数億円かかります。規模によって値段が大きく変動するため、入念に担当者と打ち合わせしましょう。
運営費用は、開発費用の1割に加え、年間で最低500万円程度とされており、契約してから稼働するまで1年以上かかるため、予算に余裕がある大企業向けです。
確実に成果を出すためには物流と開発の分野で高いノウハウと実績がある企業に依頼する必要があります。
サービスを選ぶときのポイント
WMSを導入する際は、値段のほかにも注意するべきポイントが複数あります。それらを考慮して選択しないと、相場の金額を払ったのに想定していた効果が得られないといった状況になりかねません。そこで、適切なWMSサービスを選択する際の基準を紹介します。
導入する目的をはっきりさせる
WMSを導入する目的を明確にしない状態で運用した場合、十分な効果を得るのは難しいでしょう。とくに、パッケージ型はカスタマイズ性があるため、導入目的があいまいな状態で役立ちそうな機能を選んでしまうと、費用が割高になる可能性があります。
そのため、現在の倉庫管理業務でどんな課題があり、どれを優先的に解決するべきなのかを洗い出して考えましょう。実装する機能に優先順位がつけられれば、予算が限られていても一定の効果が期待できます。
食品を扱っているなら、賞味期限や消費期限の管理機能、ECで多品目を扱っている企業なら、複数の品種を管理するための機能など、実装するべき機能を洗い出してください。
WMSを導入するコツは、目的を明確化し、必要な機能を正しく選ぶことです。もしわからない場合は、WMSを提供している企業へ問い合わせて一緒に考えてください。
クラウドか自社サーバーか決定する
WMSのサービスを選ぶ際のポイント2つ目はクラウドを利用するのか、自社サーバーを設置するのか選択することです。クラウドサービスによるWMSの場合、初期費用があまりかからず、既存のシステムを活用するため、比較的短期間で稼働できる利点がありますが、拡張機能の自由度は制限されます。また、ネットがオフラインの状態では作業できません。
一方、自社内にサーバーを設置して稼働させるWMSの場合は、インターネットに繋がっていなくても利用でき、自社専用の機能だけ導入する方法も可能です。ただし、長期利用するとコストは割高になるため、注意しましょう。
このように、WMSはクラウド・自社サーバーの選択で提供できるサービスの内容が異なります。自社にあった方法を選択してください。
別のシステムと連動できるか
WMSのサービスを選ぶポイントの3つ目は、別のシステムとの連携性です。既存のシステムと新しいシステムが連携できれば、システムを移行する手間を省略でき、コストカットが期待できます。
よく使われるのがAPI連携です。APIとは異なるソフトウェア同士で情報をやり取りするための仕様です。すでに在庫や販売のデータを管理するシステムを利用しているなら、APIを使った連携ができます。
システムを連携すれば逐次情報を手動で操作する必要がなくなり、データを正確に素早く伝達できるため、業務効率が改善します。
そのため、現在使用しているWMSとの連携性は重要です。完全に連動できない場合は、どの機能を優先的に使うのか確認しておくと、以降の選択がスムーズになります。